Interview

小林薫

うまくいかないときは、縁がなかったということ。

 舞台、映画、ドラマと出演を重ねているが、その活動をつぶさに追えば、常に動き続けていることがわかる。寡黙で、煙草をくゆらす姿が似合うイメージに反し、意外にも気さく。そして、フットワークも非常に軽い。
「今の芝居ってお笑いが中心だったりするけど、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の三浦大輔監督(劇団「ポツドール」主宰)は、あえてそこを封印したり、笑いにもっていかない芝居をやっているのが、非常に好感持てるんですよ。 そこで、彼が初めて映画を撮るって知人のスタッフから聞いて、へえ〜って思ってたら、オファーがきたんです」
躊躇なく、若者たちの作品世界に飛び込む。「そこにいる」という、確かな存在感はあれど、「先輩」として威圧感を漂わせるわけでもない。
「いろんな仕事を器用にこなせるわけでもないので、仕事になったものは縁が働いていると思います。やっぱり役者だから、いろんなものに関わりたい気持ちはあるんですが……そんな器用にできないんですよ、生き方も含めて。
いくらがんばっても、うまくいかないときはうまくいかない。それは縁がなかったんだろうと思うしかないですね」
 実にさっぱりとした口調。「昔からこういう感じですね。でも、口に出すのは、昔からじゃない」と笑う様子に、やはり気負いは感じられない。

他者を受け入れる、他者と芝居をする。

「誰しも人生をいい方向へもっていきたいとか思うけど、そんな簡単にはいかない。動くうちに、『そういうことだったのか』って後からわかることがありますよね。けど、自分ひとりで全部やろうとしたって、できるもんじゃない。だから、力を与えてもらうこと、それで一歩踏み出せることも含めて、縁というものが働いていると思うんです」
 縁を感じ、そこから届いたものを受け止める。そういえば、三浦監督作品での無気力風サラリーマンやテレビドラマ「深夜食堂」での寡黙なマスターなど、近作ではそういったニュアンスを帯びている役が目立つような気がする。
「20~30代なら、がむしゃらに進む姿が作品のテーマになるけど、僕みたいに50代で今さらもがいても遅いだろうし。ドラマを作っていくより、ドラマを『受ける』年齢なのかもしれないですね」
 そして近作を見る限りでは、そういった「受ける」ポジションが、世間から求められている時期のようにも感じる。
「今の子供たちは何を信じていいのかわからない、核みたいなものが見つからない時代でしょう。そういう中だと、他者を受け入れるセンスが、うまく育たない。でも世の中は「他者」で成り立っているわけだから、どう折り合いをつけるかは大事なことですよね。その辺がうまくいかないと、自分だけを理解してくれる人が欲しいと思うのかもしれない」
「でもそれは、ないものねだりかなとは思う」と続ける。そう感じる根拠は、やはり自身が他者との出会い、縁によって発見と変化を繰り返してきたからなのだろう。
 そこで話は、やはり冒頭の「芝居と縁」へとつながっていく。
「自分の中だけで全部やる芝居って、限界来ると思いますよ。人を利用するっていうか、役者さん同士、役の力を借りたほうが気持ちは出やすいわけで。
 芝居ってそういう風に成立していると思えば、もう少し楽になるだろうし、いろんな発見がある楽しいことのひとつになっていくと思いますね」

 

頭の中で決めていっても、そんなに意味がない。

 だから、今後の抱負を聞かれても、「そんなのない」と大きく笑う。
「それもまた縁っていうか、それぞれの作品に出会いがあるし、そこで自分の違う一面を見たりすることもあるんで、『こういうもの』って頭の中で決めていくことは、そんなに意味がない気がして。
「こういう風にやりたい」と思って、本当に求めていたら、やっぱりどっかで結びついていくんじゃないですかね。だから抱負とか本当にないんです(笑)」
 それはプライベートも同様。ひとり旅をするほどの旅好きではあるが、その際も予定を決めないことが多いという。
ただ、いつでもどこでも、何かを受け止め何かを送り出すスタンスに変化はない。そしてそれは「確かにそこにいる」存在感の理由であり、未来につながる縁をつむぐ唯一の手段なのだろう。

 

小林薫

1951年生まれ、京都府出身。80年まで劇団「状況劇場」に所属し、以後はテレビや映画、舞台、CM、ナレーションなどで幅広く活躍。近作にテレビドラマ「深夜食堂」(2010年4月DVD発売)のほか映画「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン」、「歓喜の歌」、「休暇」、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」(2010年1月30日公開予定)、ドラマ「ニュース速報は流れた」、「黒部の太陽」など。

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